2-62氏
97 名前:笑顔は葡萄酒に感染する 1[sage] 投稿日:2008/04/10(木) 23:09:08 ID:kvTEMuxB
NYの蜂蜜専門店・・・といっても、実はマルティージョ・ファミリーなるカモッラのアジトの一つである。
その奥にあるレストラン『蜂の巣』で、五人の男がテーブルを囲んでいた。
男達の手には、トランプが握られている。
ガンドール三兄弟と、マルティージョの幹部・フィーロ、
そして『葡萄酒(ヴィーノ)』クレアことフェリックス・ウォーケン。
ほんの数時間前、たまたまガンドール・ファミリーが『葡萄酒』に仕事を依頼し、
それが片付いたので折角だからとフィーロの下に来たわけである。
「・・・僕は降りるよ」
「何だよ、ノリ悪いな!!俺は勝負だ!!」
ラックはフォルドしたが、ベルガは鼻息を荒らげて勝負に出る。
「・・・俺もパス」
「いや、俺はこのまま行ける!!」
フィーロも降りたが、クレアは続けるらしい。
ベルガが手札を見せると『2』から『6』までのストレートである。
クレアの役は、『9』が三枚のスリーカード。
ちなみに、フィーロは『役無し(ブタ)』、ラックは『J』のワンペアだった。
「・・・・・・・・・・」
キースが黙って手札を見せる。
『Q』が三枚、『4』が二枚のフルハウス。
「ちっくしょう!!また兄貴の勝ちかよ!!」
「キー兄、まさかイカサマしてないよね?」
「いや、してないよ」
フィーロが溜め息をつくと、トランプを切りはじめた。
だが、フィーロはクレアの様子がいつもと何となく違う事に気づいた。
どことなく表情が暗い。
カードを配り終えると、思い切って聞いてみた。
「・・・クレア、何かあったの?」
「え?いやあ・・・別に・・・」
「話せよ、クレア」
ベルガがカードを三枚交換すると、クレアに詰め寄った。
98 名前:笑顔は葡萄酒に感染する 2[sage] 投稿日:2008/04/10(木) 23:09:58 ID:kvTEMuxB
事の始まりは、最愛の恋人シャーネ・ラフォレットの事であった。
実はつい最近、とうとうクレアは彼女と一夜を共にした。
・・・と言っても、別に肌を重ねたという意味ではない。
ジャグジー一味が寝静まった時、こっそり忍び込んで一つのベッドに並んで寝たという意味である。
クレアは夜這いをかけたい衝動を必死で押さえ、何とか朝を迎えたのだが・・・。
横で寝ている美少女の白いうなじ、わずかに見える胸元、そして極めつけは寝返りをうった瞬間の、
寝巻きの隙間から覗く綺麗な足と純白の下着。
襲ってしまった・・・いや、正確には未遂で終わった。
偶然ドアを開けたニースが、シャーネの上に乗ったクレアを変質者と間違えて・・・。
「・・・ひどかったぜ、爆弾は飛んでくる、怒鳴り声は聞こえる。
挙句の果てに『警察呼ぶか!?』なんて声まで聞こえて来る有り様だ。
シャーネは動揺してて、真っ赤になりながら涙目でナイフを振り回すし・・・」
「それはクレアが悪い」
フィーロがカードを二枚、交換した。
ベルガとラックも口々に言う。
「って言うか、実際変質者じゃねえか。
いくら恋人とはいえ勝手にベッドの中に潜り込むなんざ」
「まあ、夜這いをかけなかった根性は認めますよ。
そのまま朝になっても襲わなかったら、褒めてやりたかったぐらいです」
「だいたい、勝手に家の中に入った時点で充分変質者だよ」
最後のフィーロの言葉はさすがに効いたのか、クレアは肩を落とす。
「へ、変質者って・・・俺が?」
「『葡萄酒(ヴィーノ)』『線路の影をなぞるもの(レイルトレーサー)』に続いて、
3つ目の呼び名でも考えたらどうですか?」
ラックが皮肉混じりに笑いながら、カードを三枚交換した。
「強姦未遂で終わったからなあ・・・さしずめ『強姦の影をなぞるもの(レイプトレーサー)』だな」
ベルガの下手な洒落に、思わず吹き出すフィーロとラック。
一方、当のクレアは完全に顔が引きつっている。
キースだけしか気付いていないが、額には少し青筋が浮かんでいた。
99 名前:笑顔は葡萄酒に感染する 3[sage] 投稿日:2008/04/10(木) 23:10:43 ID:kvTEMuxB
「とにかく仲直りをする事が先決だよ」
「ええ、出来るだけ早い内にね」
フィーロとラックが言うと、クレアが溜め息をつく。
「とりあえず、何て言って切り出せばいい?」
「あ〜・・・、例えばだな・・・」
ベルガが言葉に詰まる。
元々、それほど頭が回る人間ではない。
「・・・・・自分で考えろ・・・・・」
キースが呟くと、クレアがまた肩を落とした。
「せめてアドバイスぐらいしてくれよ」
「知るか」
「あいにく、他人の恋愛沙汰に首を突っ込みたくはないので」
ベルガとラックが冷たく突き放す。
「そんな事言わずに・・・」
「さあ、勝負だ!!」
「僕も勝負」
「俺も行ける、クレアは?」
もはやフィーロまで無視する始末。
クレアは半ばヤケになりながらも叫んだ。
「ええい、俺も勝負だ!!」
クレアの声を合図に、五人全員が手札を見せる。
ベルガ、『スペード』のフラッシュ。
ラック、『5』から『9』までのストレート。
フィーロ、『10』のスリーカード。
クレア、『3』が三枚、『J』が二枚のフルハウス。
キース、『A』が四枚のフォアカード。
結局、この日はキースの一人勝ちだった。
100 名前:笑顔は葡萄酒に感染する 4[sage] 投稿日:2008/04/10(木) 23:11:32 ID:kvTEMuxB
時を同じくして、『表向きの顔』である蜂蜜専門店に一人の男がひょっこり現れた。
「いらっしゃい」
セーナが客に声をかける。
「いい店だよな」
客の男が店の中を見渡して言った感想が、それであった。
男は、蜂蜜の瓶を手に取るとセーナに手渡す。
「これ下さい」
代金を支払うと、男は瓶を受け取って店を出た。
その顔は、入店した時からずっと笑顔だった。
*
シャーネは公園のベンチに座っていた。
つい先日の、クレアの行為に思いを馳せながら。
目が覚めると、彼は自分の上に乗っていた。
自分の鎖骨の辺りに口付けをし、それから彼の手が自分の寝巻きの中に入って来て自分の胸に触れ、
もう片方の手は自分の下着の方へ・・・。
そこまで思い出して、シャーネは自分の頬が熱くなった。
何でクレアはあんな事をしたんだろう・・・。
「どうしたのかな?」
シャーネは突然声を掛けられて、驚いて顔を上げた。
目の前には、蜂蜜の瓶を小脇に抱えた、ニコニコと笑っている男が立っていた。
「恋人と喧嘩でもしたのかな?」
当たらずとも遠からず。
喧嘩はしていないが、彼と当分顔を合わせたくないというのも事実である。
101 名前:笑顔は葡萄酒に感染する 5[sage] 投稿日:2008/04/10(木) 23:12:30 ID:kvTEMuxB
顔を伏せたシャーネを見て、男は悲しそうに眉をひそめた。
「それは悲しいね、すぐに仲直りしなきゃ」
「・・・・・・・・・・?」
はい、と男に手渡されたのは蜂蜜の瓶。
黄金色の液体が、瓶一杯に詰まっていた。
「甘い物で仲直り、きっと上手くいくよ」
男はそう言って、ニッコリと笑う。
自然と、シャーネの顔にも笑みが浮かぶ。
「(・・・変な人)」
「そう、その顔!!」
「?」
男が急に大声を上げた。
シャーネの顔を指差して、またニッコリと笑った。
「その顔だよ、いつも笑顔が一番。
笑って笑って」
男は大きく手を振りながら、公園の出口へと向かう。
「人生笑って生きなきゃ、笑顔笑顔」
そんな事を言いながら、男はNYの町並みへと消えていった。
「(・・・結局、何だったのだろう・・・?)」
シャーネの頭に疑問符が浮かぶ。
現れてから消えるまで、終始笑っていた男だった。
酒か麻薬で頭のネジが外れたのだろうか?
それともあの顔は笑った顔だけの仮面?
しかし、その考えは唐突に遮られた。
突然目の前が真っ暗になり、温かい手が自分の目を覆う。
そして、あの人の子供の様な声。
102 名前:笑顔は葡萄酒に感染する 6[sage] 投稿日:2008/04/10(木) 23:13:25 ID:kvTEMuxB
「だーれだ?」
「・・・・・・・・・・っ」
シャーネが振り向くと、そこにはクレアが立っていた。
「・・・・・!!」
「よう」
クレアは、バツの悪そうな顔で頭を掻いた。
「この間はゴメン!!本当に悪かった!!」
そう言いながら、シャーネに向かって頭を下げる。
シャーネはというと、目を丸くしながらクレアを見つめる。
「・・・・・・・・・・」
「えっ?」
クレアは耳を疑った。
もう怒ってないから・・・。
顔を上げると、シャーネの笑顔が見えた。
その可愛い笑顔に、クレアは思わずシャーネを抱きしめる。
彼女を抱きしめながら、彼は思った。
「(・・・ああ、やっぱりシャーネを好きになって良かった!!)」
*
シャーネはクレアの自分の部屋へと誘った。
幸いジャグジー達は留守のようだ。
ベッドの上で、二人は唇を重ねる。
複雑に舌を絡めあいながら、シャーネをそのまま寝かせる。
口を離すと、唾液の糸が引いた。
「今日は邪魔も入らないだろ?」
器用に服を脱がせると、シャーネの胸にそっと口づけする。
「・・・・・!!」
彼女の体がビクンと震えた。
舌先で胸の突起をチロチロと攻める。
その度に、声にならない声がシャーネの口から漏れるのだ。
103 名前:笑顔は葡萄酒に感染する 7[sage] 投稿日:2008/04/10(木) 23:14:16 ID:kvTEMuxB
「シャーネ・・・、結構敏感だな」
「・・・・・?」
息を荒くしながら、またもシャーネの頭に疑問符が浮かぶ。
「(・・・敏感?何が?・・・でも何か恥ずかしい・・・)」
クレアは下着を脱がすと、シャーネの内腿を大事な所に触れないように、何度も舌で往復する。
「・・・・・っ!!」
恥ずかしさとくすぐったさで、シャーネは何度も身を硬くする。
そんな彼女の、薄い茂みにクレアは舌を落とした。
「!!」
思わずクレアの頭を引き剥がす。
しかし彼は、そのまま執拗にシャーネの大事な所を舌で愛撫する。
「シャーネ、すごく綺麗だ」
クレアの舌がそこを舐める度に、体の奥から熱い何かがこみ上げて来る。
すでに熱い液体がクレアの舌に絡み付いてくる。
彼は少しの悪戯心で、彼女の敏感な突起を思いっきり吸い上げた。
「ーーーっ!!」
まるで魚のように、シャーネの体がビクンと跳ね上がる。
同時に、彼女の体に痙攣が走る。
「(・・・イったか)」
彼女の顔を見ると、涙と汗と唾液でびっしょりだった。
はあはあと喘ぐ彼女の唇に、そっと優しいキスをする。
「大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・」
頬を染めながら、シャーネはコクリと頷いた。
その顔に、またクレアの理性が飛びかける。
しかしクレアは冷静に仰向けになると、シャーネを自分の上へと乗せた。
104 名前:笑顔は葡萄酒に感染する 8[sage] 投稿日:2008/04/10(木) 23:15:04 ID:kvTEMuxB
「いいかシャーネ、そのまま腰を動かすんだ」
「・・・・・・・・・・」
またコクリと頷く。
そしてシャーネが腰を振った瞬間、彼女の口からまた声にならない声が漏れた。
自分の割れ目を、クレアの性器に擦りつけながら前後に動く。
正直、まだクレアは彼女と交わる事にわずかながら罪悪感を感じていた。
だからこそ、せめてこれならばと素股を選んだわけである。
彼女の愛液が潤滑油となって、クレアの性器を擦り上げる。
その度に、クレアもシャーネも喘ぎ声を漏らす。
「・・・・・!!」
「シャーネ、どうだ・・・?」
頭が真っ白になる、何も考えられない。
ただ、自分の下にいる男の事しか考えられない。
「(・・・ん・・・?)」
その時、クレアは妙な気配を感じ、視線をドアへと移動させた。
完全に閉まっていたはずのドアが半開きになっており、そこに誰かいる。
普通の人間なら絶対に気付かないはずだが、何故かクレアには人影がはっきりと見えた。
先日の一件で爆弾を投げつけてきた、火傷を負った眼帯の女だ。
それにしても、いくら行為の最中とはいえ、ドアの向こうの人間に気付かないとは。
「(・・・やれやれ、殺し屋失格だな・・・)」
「・・・・・っ!!」
シャーネの動きが早くなる。
同時に、クレアにも限界が近づく。
「シャーネ・・・っ!!もう・・・!!」
「〜〜〜〜〜っ!!」
クレアの性器から、白濁液が吐き出される。
シャーネの割れ目からも、透明な液体が噴き出す。
そして、ドアの向こうのニースも体を震わせた。
105 名前:笑顔は葡萄酒に感染する 9[sage] 投稿日:2008/04/10(木) 23:15:49 ID:kvTEMuxB
二人は汗びっしょりになりながら、ベッドに並んで横たわる。
クレアが横のシャーネに言った。
「・・・また今度、続きしような」
「・・・・・・・・・・」
シャーネの頬が赤く染まると、クレアが彼女を抱き寄せる。
クレアに抱かれながら、シャーネは思い出した。
「(・・・・・そうだ、あの男!!)」
公園で会ったあの笑顔の男。
やっと思い出した。
あの男は・・・。
*
ニースは廊下で、座り込んでいた。
荒い息遣い、左手は自分の胸へ、右手は自分の下着の中へ・・・。
「(・・・ジャグジーに、あんな風にされたら・・・)」
すでにグッショリと濡れた下着から、自分の愛液で濡れた指を引き抜きながら、
ニースはボンヤリとそんな事を思った。
「(・・・今夜当たり、ジャグジーを誘ってみようかな・・・?)」
*
「・・・クレアの奴、どうなったかな?」
「さあね」
「今頃、お楽しみ中だったりしてな」
ベルガ、大正解。
幼馴染みの恋の行方に思いを馳せつつ、四人はポーカーに興じていた。
「次はお前の番だぞ、フィーロ」
「な、何が!?」
ベルガがニヤニヤしながら、フィーロに詰め寄った。
「お前、もうヤったのか?」
「え、エニスとはまだだよ!!」
「誰も名前は出してないよ」
ラックが笑いを噛み殺しながら、カードを三枚交換した。
106 名前:笑顔は葡萄酒に感染する 10[sage] 投稿日:2008/04/10(木) 23:16:41 ID:kvTEMuxB
「そういうラックは!?恋人は!?」
「まだ探し中」
「フィーロ、そろそろ腹括れよ」
「うるさいなあ、もう!!勝負だ!!」
四人が手札を見せ合った。
フィーロ、『J』が二枚、『7』が二枚のツーペア。
ラック、『ダイヤ』のフラッシュ。
ベルガ、『K』が二枚のワンペア。
キース、『8』のスリーカード。
結局、この日は一度もキースに勝てなかった。
*
モルサが、また胡椒を切らしてしまいそうなのでロニーとマイザーが二人で買いに出かけた。
マルティージョのボスは、とにかく胡椒の消費量が激しいのだ。
「何であんなに胡椒に執着するのか・・・」
「さあな」
胡椒の袋を抱えた二人が、道を歩いていた。
その時、マイザーの目に驚きの色が浮かぶ。
人混みの中に、一瞬だけ見えた男の顔。
しかし、その男の顔は人混みに紛れてすぐに消えた。
「・・・どうした?」
「いえ、古い知り合いによく似た顔を見たので・・・」
「・・・まあいい」
二人はマルティージョの『蜂の巣』へと帰ろうとした。
マイザーは最後に、もう一度だけ振り向いたが、当然男の姿など見えない。
「(・・・人違いか・・・?それともまさか・・・)」
*
男は人混みの中を歩いていた。
そして立ち止まり、虚空に向かって笑みを浮かべると呟いた。
「・・・恋も人生も、やっぱり『ハッピーエンド』が一番だよな」
笑いに飢えた、笑顔の中毒者はそのままNYの町の中へと消えていった・・・。
糸冬
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